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札幌地方裁判所 昭和45年(ワ)332号 判決

原告 中和石油株式会社

右代表者代表取締役 杉沢敏正

右訴訟代理人弁護士 毛利宏一

被告 白野昇一

被告 マルショウ食品興業株式会社

右代表者代表取締役 馬場恭二

主文

一  被告マルショウ食品興業株式会社は原告に対し金五三万四五八七円およびうち金一五万二〇〇〇円に対する昭和四四年一二月二〇日から、うち金三八万二五八七円に対する昭和四五年二月一日からそれぞれ完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

二  被告両名は連帯して原告に対し金六万八五八円およびこれに対する昭和四四年一二月一二日から完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用はこれを四分し、その一を被告白野昇一の負担とし、その余を被告マルショウ食品興業株式会社の負担とする。

四  この判決の主文一、二項は仮に執行できる。

事実

原告訴訟代理人は主文一、二項と同旨および「訴訟費用は被告両名の連帯負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、請求原因として、

「一 原告は石油製品類、自動車用品、暖房用品等の販売およびパンク修理等の作業役務の供与を業としている。

二 原告は、訴外マルト食品興業株式会社(以下訴外会社と略記)に対し、昭和四四年一〇月一日から同年一二月一六日までの間に代金合計三八万三一七四円相当の石油製品類、自動車用品、暖房用品等およびパンク修理等の作業役務を、各月売上分について翌月末日支払の約で販売または供与した。

三1 訴外会社は別紙目録一に記載の約束手形一通を振り出した。

2 原告は右手形を訴外株式会社北海道銀行に対して裏書し、同銀行は満期に支払場所で右手形を呈示したが、支払を拒絶されたので、原告は右手形の返戻を受けて所持している。

四1 被告白野昇一と訴外会社は共同して別紙目録二に記載の約束手形一通を振り出した。

2 原告は右手形を訴外株式会社北海道銀行に対して裏書し、同銀行は満期に支払場所で右手形を呈示したが、支払を拒絶されたので、原告は右手形の返戻を受けて所持している。

五 訴外会社は昭和四四年一二月中旬頃倒産したが、被告マルショウ食品興業株式会社(以下被告会社と略記)はそのころ訴外会社から営業用財産、従業員等の一切を含めた営業の譲渡を受け、かつ訴外会社の看板をそのまま使用し、訴外会社名入りの納品書や受領書用紙を使用して、昭和四五年三月初旬頃まで営業を継続した。

したがって、被告会社は商法二六条にいう営業譲渡人の商号を続用した営業譲受人にあたるから、訴外会社の債務について支払の責任がある。

六 よって、被告会社に対しては右二項の代金から返品または値引分五八七円を差し引いた残額三八万二五八七円とこれに対する最終弁済期の翌日昭和四五年二月一日から完済に至るまで商事法定利率の年六分の割合による遅延損害金ならびに右三項の約束手形金一五万二〇〇〇円およびこれに対する満期の日昭和四四年一二月二〇日から完済に至るまで手形法所定の年六分の割合による利息の、被告両名に対しては連帯して右四項の約束手形金六万八五八円およびこれに対する満期の日昭和四四年一二月一二日から完済に至るまで手形法所定の年六分の割合による利息の、各支払を求める。と述べた。

被告白野昇一は適式の呼び出しを受けながら本件口頭弁論期日に出頭しなかったが、その陳述したものとみなされた答弁書には、

「負債は認めます。」

との記載がある。

被告会社代表者は請求棄却の判決を求め、答弁として、

「 請求原因一項の事実は認める。

同二項の事実は知らない。

同四項中1の事実は知らない。同2の事実中、原告がその主張の手形を所持していることは知らないが、その余の事実は認める。

同五項中、前段の事実は認める。ただし、訴外会社の看板はその一部をそのまま使用したが、昭和四五年二月頃には書き替え、残りは昭和四四年一一月頃書き換えている。また納品書や受領書の用紙は昭和四五年一月三〇日頃まで訴外会社のものを使用したが、それ以後は使用していない。

同項後段の点は争う。」

と述べた。

立証≪省略≫

理由

第一被告白野昇一に対する請求について

被告白野昇一は原告主張の事実を明らかに争わないのでこれを自白したものとみなすべく、右当事者間に争いない事実によれば原告の同被告に対する請求は正当である。

第二被告会社に対する請求について

一  請求原因一項の事実については当事者間に争いがない。

二  ≪証拠省略≫によれば請求原因二項の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

三  ≪証拠省略≫によれば請求原因三項の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

四  ≪証拠省略≫によれば請求原因四項の1の事実および同2のうち原告がその主張の手形を所持している事実を認めることができ、この認定に反する証拠はなく、同2のうちその余の事実については当事者間に争いがない。

五  訴外会社が昭和四四年一二月中旬頃倒産し、そのころ被告会社が訴外会社から営業用財産、従業員等の一切を含めた営業の譲渡を受けた事実は当事者間に争いがない。

そして≪証拠省略≫を総合すれば、訴外会社から営業の譲渡を受けたのち、訴外会社が使用していた同一建物を使用し、少なくとも昭和四五年三月頃までは訴外会社の商号を表示した看板や納品書、受領書用紙などをそのまま使用して、外観上訴外会社と被告会社の区別がつかないような型態で同一営業を行なった事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

右認定の事実によれば、被告会社は商法二六条一項にいう営業譲渡人の商号を続用した営業譲受人というべきであるから、被告会社には訴外会社の営業によって生じた債務について弁済の責任がある。

第三結論

以上によれば原告の被告両名に対する請求はすべて正当であるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条一項但書、仮執行宣言につき同一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 稲守孝夫)

〈以下省略〉

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